- 宅建の通信講座は、「総額」「学び方」「質問できるか」「合格特典の条件」の4つで比べると、自分に合うものが絞れます。各社の合格率は集計の仕方が違うので、そのまま比べられません。
- 令和7年度の試験は合格率18.7%、合格点は50問中33点。合格点は年によって33〜37点と動きます。
- 建築の人は、「法令上の制限」(都市計画法・建築基準法など8問)で用語を知っている分、入りやすいはずです。逆に、点の大きい民法と宅建業法は、ほぼゼロからです。
- 安く、スマホで進めたいならスタディング。質問やカリキュラムの手厚さを求めるならアガルート。紙のテキストで基礎から固めたいならフォーサイト。この3つが候補になります。
建築の人が宅建を取る意味
一級建築士は、建物を安全に、法律に合わせて成り立たせる資格です。宅建(宅地建物取引士)は、その土地や建物を売る・貸す・買うときの取引と契約の資格です。
設計や施工だけをしているうちは、取引の話は遠く感じます。でも、用地を探す、事業として建物を持つ、発注者の側に回る、といった場面では、土地の権利や契約、売買のルールを知らないと話についていけません。建てる知識に「お金と契約」の知識を足すのが、建築の人にとっての宅建です。
建物の価値は、建てたときではなく、取引されるときに決まる。そこを知っている技術者は、事業の話に呼ばれる。
私自身は、宅建を実務で直接使う機会はありませんでした。それでも、プロジェクトマネジャーをしていたときや、事業会社の執行役員として転職するときに、不動産の知識があることは重宝されました。契約ごとにも強くなります。その意味では、宅建で仕事が変わったと言えるかもしれません。
宅建試験の中身と難しさ(令和7年度)
宅建試験は、年に1回、10月の第3日曜日に行われます。4つの選択肢から1つを選ぶ問題が50問、時間は2時間です。令和7年度の結果は次のとおりです。
| 令和5年度 | 令和6年度 | 令和7年度 | |
|---|---|---|---|
| 受験者 | 233,276人 | 241,436人 | 245,462人 |
| 合格者 | 40,025人 | 44,992人 | 45,821人 |
| 合格率 | 17.2% | 18.6% | 18.7% |
| 合格点 | 36点 | 37点 | 33点 |
合格率は毎年15〜19%ほどで、受験者の5〜6人に1人しか受かりません。合格点は決まっておらず、問題の難しさで毎年動きます。「何点取れば受かる」ではなく、「受験者の上位2割に入る」試験だと考えたほうが、準備を誤りません。
令和8年度は10月18日に試験が終わり、受験者は246,422人(速報)でした。合格発表は11月25日です。今から講座を選ぶ人は、2027年10月の試験に向けた準備になります。
建築の人が有利な科目、不利な科目

50問は、4つの分野に分かれています。
| 分野 | 問題数 | 中身 | 建築の人から見ると |
|---|---|---|---|
| 宅建業法 | 20問 | 不動産会社が守るルール(重要事項説明、契約書、報酬など) | ほぼ初めて。ただし覚えれば点になりやすい |
| 権利関係 | 14問 | 民法、借地借家法、区分所有法、不動産登記法 | いちばんの山。請負契約の考え方だけは身近 |
| 法令上の制限 | 8問 | 都市計画法、建築基準法、農地法、国土利用計画法など | 用途地域、建ぺい率、容積率、接道など、仕事で使う言葉が多い |
| 税・その他 | 8問 | 不動産の税金、地価公示、統計、土地と建物の知識 | 建物の構造や土地の性質の問題は身近。5問は登録講習で免除 |
建築の人がいちばん楽をできるのは、法令上の制限です。用途地域や建ぺい率、道路と敷地の関係は、設計の初めに必ず確かめることなので、言葉で迷いません。ただし、宅建で問われるのは都市計画法の開発許可や、農地法、国土利用計画法の届出など、設計ではあまり触れない部分も多くあります。「知っているつもり」で手を抜くと、点を落とします。
そして、点の大きい宅建業法(20問)と権利関係(14問)は、建築の経験がほとんど役に立ちません。講座を選ぶときは、この2つを、自分が続けられる形で教えてくれるかを見てください。
私の実感でも、最後の5問(土地と建物の知識を問う問題)は、建築の実務をしていれば抵抗なく点が取れます。法令上の制限にも建築の知識は役に立ちます。一方で、税や民法には、建築の知識はまったく役に立ちません。ここは初めて学ぶつもりで取り組んでください。
私が合格したときの点数は42点でした。決め手になったのは、権利関係(民法)です。模試では民法で点を落としがちでしたが、本番では逆に民法で点が取れ、それが合格をぐっと引き寄せました。建築の知識が効かない民法で取れるかどうかが、合否を分けます。講座を選ぶなら、民法の教え方をいちばんに見てください。
宅建の通信講座の選び方:4つの点
働きながら受ける人にとって、いちばん大事なのは2つ目の「学び方」です。宅建の勉強は数か月続きます。現場や打合せで帰りが遅い日が続くと、机に向かう時間はなくなります。移動や昼休みの10分で進められるかは、価格より効いてきます。
もう1つ気をつけたいのが、各社の「受講生合格率」です。どの講座も高い数字を出していますが、数え方が違います。アンケートに答えた人だけで出している、有料講座の受講者だけで出している、などです。合格率の高さで選ぶより、上の4つの点で、自分に合うかを見るほうが確かです。
宅建の通信講座3社の比較
価格・特典は各社の公式サイトの掲載より(確認日:2026年10月31日)。キャンペーンや年度で変わるため、申し込む前に公式サイトでご確認ください。
スタディング:安く、スマホで進めたい人に
スマホだけで、講義・問題演習・復習まで進められる講座です。動画は1本5分ほどに分かれていて、倍速やオフラインでの再生もできます。AIが苦手な問題を出し直す機能もあります。3社の中では価格がいちばん抑えめで、2025年度は1,230名の合格者(合格体験記を出した人の数)がいたと公表しています。
一方で、質問できる回数は上位のコースでも限られます。民法の考え方で何度もつまずきそうな人は、質問の多さも見てください。
スタディングの公式サイト:スタディング 宅建士講座(広告ではありません)
アガルート:費用をかけても、手厚く学びたい人に
難関資格の講座で知られる通信講座です。初めての人向けの「入門カリキュラム」と、学習経験のある人向けの「中上級カリキュラム」があり、それぞれ講義を絞った「ライト」と、全部入りの「フル」から選べます。2025年度の受講生の合格率は77.01%(有料講座の受講者で集計した自社の公表値)です。
価格は3社の中でいちばん高めです。対象のコースで合格すると、受講料の全額返金かお祝い金を受けられる特典があります。ただし、合格体験記やインタビューへの協力などの条件があるので、申し込む前に読んでおきましょう。
フォーサイト:紙のテキストで基礎から固めたい人に
フルカラーの紙のテキストと、専用の学習アプリ(ManaBun)を組み合わせる講座です。アプリが、1週間に使える時間から学習の予定を立ててくれます。2025年度の受講生の合格率は75.0%(自社の公表値)です。
上位のセットには、不合格のとき受講料を全額返金する制度があります(条件あり)。また、一部のプランは一般教育訓練給付の対象で、修了すると受講料の20%が支給されます。対象のプランと条件は、公式サイトで確かめてください。
5問免除(登録講習)は、建築の人も使えるか
宅建には、「登録講習」を修了すると、50問のうち5問(問46〜50)が免除になる仕組みがあります。令和7年度の合格点は、一般の受験者が50問中33点、登録講習の修了者が45問中28点でした。
ただし、登録講習を受けられるのは、宅建業(不動産の売買や仲介)の会社で働いていて、従業者証明書を持っている人です。設計事務所や建設会社にいても、勤め先が宅建業の免許を持っていなければ、受けられません。勤め先が免許を持っているかは、総務や不動産の部署に聞くのが早いです。
独学でいい人、通信講座が向かない人
宅建は、市販のテキストと過去問で合格する人もいる試験です。次に当てはまる人は、まず独学で始めて、つまずいてから講座を考えても遅くありません。
- 民法や法律の勉強をしたことがあり、自分で予定を立てて続けられる人
- すでに不動産の仕事をしていて、宅建業法の流れを実務で知っている人
- 今年は受けるか決めておらず、まず試験の中身を見てみたい人(市販の過去問集で十分)
私は独学で合格しました。やり方は、問題集をくり返すことです。参考書を読んでから問題に入るのではなく、最初から問題を解き、参考書は辞書のように引くだけにしました。問題集を3周、4周とすると、案外、理屈もわかってきて、問題を見た瞬間に判断できるようになります。
このやり方が合うのは、自分で予定を立てて、同じ問題集を何周も回せる人です。仕事が忙しく、何から手をつけるかを決めること自体が負担なら、カリキュラムと問題演習がセットになった通信講座を使うほうが、続けやすいはずです。
ほかの資格と比べたいなら
建築の人が次に取る資格は、宅建のほかに、賃貸不動産経営管理士やインテリアコーディネーターがあります。「お金と契約」に寄せるなら宅建、「建てたあとの管理」に寄せるなら賃貸不動産経営管理士、「空間と提案」に寄せるならインテリアコーディネーターです。
- 賃貸不動産経営管理士は意味ない?一級建築士が取ってわかったこと(宅建の前に取る順番の話も書いています)
- インテリアコーディネーターは建築の人に必要か。合格率と講座の選び方
- 施工管理技士の経験記述の書き方
- 資格と講座の選び方ガイド
まとめ
- 宅建は、建てる知識に「お金と契約」を足す資格。用地、売買、事業の場面で効く
- 令和7年度は合格率18.7%、合格点33点。合格点は毎年動くので、上位2割に入る準備をする
- 建築の人は「法令上の制限」に入りやすい。点の大きい宅建業法と権利関係を、続けられる形で学べる講座を選ぶ
- 講座は、総額・学び方・質問・特典の条件の4つで比べる。各社の合格率は数え方が違う
- 5問免除は、宅建業の会社で働く人だけ
試験データ:一般財団法人 不動産適正取引推進機構「試験実施概況(令和7年度以前10年間)」「令和8年度 宅地建物取引士資格試験 受験状況【速報】」(2026年10月19日)、同機構「試験のスケジュール」。各社の価格・合格率・特典は各社の公式サイトの掲載より。最新の情報は公式サイトでご確認ください。(確認日:2026年10月31日)